乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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なにもかもが遅い。



これ、本物の雪?と子供が聞いている。



ゲームか、携帯電話か、液晶のむこうの世界をみんな見ている。
そちらの天気はいかがですか。



湘南新宿ラインで、あのおじさんが何に怒ったのか、イヤホンをしていてわからなかった。
女の人が、あなたのほうが迷惑です、と言い返していたのはわかった。



ドアは半自動、
半自動?



降りつづける雪の、
一粒一粒にたぶんそれぞれの時間が流れて、
それぞれに知らないふりをしている。



立て板に雪。
意味。かろうじて聞いている。



たまごっちってまだあるのか!!



夏より冬のほうが好き、冬はきれいだから、と横浜から来た少年は言う。



雪の話しかしない。



なめらかな筆記体のようにどんどん右に流れる。



グルメリアポパイ。



上越国際スキー場、の看板をみて、どういうところが国際なの?と尋ねる。



そんなに重そうなのに落ちないのか、柿。



いちばん上の段に「あったか〜い」、でも「つめた〜い」のほうが多いのね。



六日町でたくさん降りる。



五日町ではそんなに降りない。



ゴージャスな唇だ。



電気が消えた。
すぐに復旧します、とのアナウンス。


男はいいもんだなあ、と思うのである。こんなふうに云うと、それじゃ女はどうなんだ、とやられては困る。これはそういう論ではなくて、私の狭い思いかたを話すということだけだ。
幸田文「捨てた男のよさ」より




電気がついた。



スキー板をかつての恋人のように抱く。



線路が川のようになる。



降ったそばからつららになる。



生まれかわって雪になるには、どうしたらいいのだろう。



もうすぐ着く。
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by mayukoism | 2010-12-29 15:17 | twitter的日常

黄色い日々

近くのお屋敷の軒先に、見あげるほどの椿が白い花を咲かせている。
黄色い花心をふかふかとさせて、あれは椿だと思うのだけど、あんまり立派なので
もしかしたらちがう花木なのかもしれない。
そういうことを、しらべなくてもわかるような大人になりたかったが、たぶんもう遅い。

黄色いふかふか、と言えば昨日、旅猫雑貨店のカネコさんにさつまいもをいただいた。
さつまいもを料理したことがないという同居人の言葉に、はて、と記憶をさらってみたが、
ふかす、煮る、くらいしか覚えがない。牛乳で煮るさつまいもはおいしい。
帳場のカネコさんが向田邦子のレシピ、とおっしゃったので、レモン煮、と答えてしまった。

というわけで、さつまいものレモン煮である。
『向田邦子の手料理』(講談社)によれば、栗の甘露煮もともに煮るようだけど用意がないので省略。
皮をむいたさつまいもは冬のかたくなな肌のようなのに、火をとおすとやわらかな黄にそまる。
黄に見とれてゆですぎた。輪ぎりレモンをうかべた段階で、いくつかはほろほろとくずれた。

レシピというのは言葉のかたちでのこり、手先にのこり、そのあと味覚につたわり、滋養となる。
料理には、何段階にもわたってていねいな伝達がある。
くずれたさつまいもを味見と称してつまむ。酸味と苦みがおなじはやさでひろがる。
すこし冷えたレモン煮の小鉢が、お通しとしてテーブルに置かれたら、時間はゆっくり流れるのだろう。
こんどレモン煮をつくるときは、下ゆでは軽めにしよう。

朝、嵐のぬけた雑司が谷霊園は落ちたイチョウの葉で、いつもより明るく見えた。
どうしようとわたしの勝手、と言わんばかりに墓石の、いろんな向きで、いろんな位置に、
黄色い葉がぺたぺたと、無邪気な手のひらのようにくっついていた。
やがて、師走というのに夏のおわりのような正午がきた。
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by mayukoism | 2010-12-04 02:34 | 生活