乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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<   2010年 01月 ( 5 )   > この月の画像一覧

奏でる人と歌う人

思いを言葉にすることで、世界は断面になる。
ひとつとして同じ断面はない。
そのとき、あなたとわたしがどこにいて、なにを見て、
季節はいつだったか、天気はどのようだったか、
あなたはいくつだったか、わたしはいくつだったか。
言葉からこぼれおちたものもすべてふくめて、世界はいくつもの断面になる。

息もつかせないラップでつみかさなる世界の断面の数々を、
その日、ワメトークのゲストだった飯沢耕太郎さんが、ウクレレの音色で
やわらかくおし流していく。
どんなにおし流しても、リボーさんのラップは次から次へと光のように生まれるので、
世界はどんどん切りかわる。
音に、言葉に、別の音に、また別の言葉に。

外市&ワメトークの打ちあげで聴いた、飯沢耕太郎さんのウクレレと、
リボーさんのラップ、そして口笛の二重奏がいまだに忘れられない。
そして、忘れられないけれど、思い出せない。
なんというか明確な音や、言葉として思い出せないのだ。
そのときにいた「和民」の明るさや、こもった空気の感じや、照明のあたったレタスの水滴や、
そういった「場」のすべて、「時間」のすべてが、ぼんやりとまるい、あたたかなかたまりになって、
記憶のなかでとびはねている。

ひとしきり歌いおえて拍手ののち、飯沢さんがレットイットビーだったんだよ、と言った。
軽やかな手つきで弦をはじく、その指先から聞こえてきたのはビートルズで、
リボーさんは『Let it be』の旋律にのせて、ラップをきざんだのだった。
飯沢さんは深くやわらかな歌声の持ち主でもあり、『Let it be』のはじめのメロディを歌った。
飯沢さんのまわりには飯沢さんという風が吹いていて、その風にあたっているのが
なんともいえず、ここちよい。
この人がキノコの、少女マンガの、写真の、とうっすら思いながら見つめる。

リボーさんのラップを聴くたびに思いがせりあがってきてしまうのは、そのリズムが
もしかしたら走馬灯のリズムなのではないか、と思うことがある。

この世界にさよならをするときに脳裏にかけめぐるという、あの走馬灯のことを
だれにも確かめようがないし、確かめるつもりもないのだけど、
ぱしゃっ、ぱしゃっと鮮やかに世界を切ってみせる即興のリボーさんのライブを、
飯沢さんのやわらかなウクレレの音と、どこまでものびていきそうな口笛とともに、
となりで聴けたことで、わたしの世界のどこかがたぶん切りかわったはずなのだ。

その断面のことを、断面はすぐに流されていくけれど、
真正面からわたしは、わたしの言葉で語れたら、
大きすぎず小さすぎもしない、断面にみあった言葉で素直に語れたら、と、
いつも、どこにいても、わたしは思って奏でる人や歌う人を見る。



※下のコメント欄にリボーさんが、この日のラップの詞を書きこんでくれました。
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by mayukoism | 2010-01-19 21:37 | 聞いたこと

わめぞ2010

今週末は2010年一発目の外市です。
ヒートテックやらヒートファクトやらヒートポンプやら、
とにかくぐるぐる巻きの防寒仕様で、ごゆっくり本をお選びください。
倉敷から蟲文庫さんもいらっしゃいます。
ワメトーク聴けるかた、存分にお楽しみください。

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「外、行く?」 

第18回 古書往来座 外市 ~軒下の古本・雑貨縁日~

南池袋・古書往来座の外壁にズラリ3000冊の古本から雑貨、楽しいガラクタまで。
敷居の低い、家族で楽しめる縁日気分の古本市です。2010年度、外初め。

●スペシャルゲスト

蟲文庫(倉敷)

■日時

2010年1月16日(土)~17日(日) 

雨天決行(一部の棚などは店内に移動します。)

16日⇒11:00ごろ~19:00(往来座も同様)

17日⇒12:00~18:00(往来座も同様)

■会場

古書往来座 外スペース東京都豊島区南池袋3丁目8-1ニックハイム南池袋1階

→池袋ジュンク堂から徒歩4分

→東京メトロ副都心線「雑司が谷」駅・2番出口から徒歩4分

→都電荒川線「鬼子母神前」電停より徒歩6分

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そして外市のあとはちょっと足をのばして。↓

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『アトリエ・モンタールの作家たち』 
~みらい館大明アーティスト作品展~


アトリエ・モンタールとは、旧豊島区立大明小学校跡地施設「みらい館大明」の理科室を
活用したアトリエ。NPOが豊島区に主な活動場所を求める若手芸術家に提供している場所。
この展覧会では、現在「アトリエ・モンタール」で創作活動を行っている蛯子真理央氏、
武藤良子氏、2名のアーティストをご紹介します。豊かな色彩と、自由で広々とした表現が
織りなす独特の世界をお楽しみください。

■日時

2010年1月7日(木)~17日(日) 10:00~18:00

■会場

あうるすぽっと 劇場ホワイエ・ロビー(東池袋)




「オリジナル燐寸ラベル&マッチ箱アート展 vol9」

年始恒例のマッチ展も9回目となりました。世の中からしだいに使われなくなり貴重な存在に
なっている燐寸が、新たな存在感をもってより良いかたちで残っていくことを願って、
イラストレーターやデザイナーにオリジナルマッチを作ってもらいました。86人のマッチを
お楽しみください。

■日時

2010年1月8日(金)~25日(月)

11:00~19:00 (最終日17:00)

14、21日休廊

■会場

オーパ・ギャラリー(青山)

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そして、古書現世向井さんは、いろんな人の輪の中で笑ったり眠ったり歌ったりしながら、
いつでも少し先を見ています。
ときどき遠くから、隠れてその目をみている。↓

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古書現世店番日記「僕たちの街のカタチを目指して
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by mayukoism | 2010-01-15 02:58 | ■お知らせ■

ある午後のこと

何枚服をかさねても、冷たい膜が全身にくっついてはなれないような寒い日で、
午後、立ち食いの豚天そばを食べて知人を見送ったあとに、部屋に戻って
もう一枚服を着てから、「雑司が谷白想」の最後のパラグラフを仕上げた。

3行書いて息が出来なくなって15分休むような、この全力疾走すぎる原稿の書き方を
どうにかしなければいけないと思いながら、一文一語を精査するように読みかえす。

これ以上の文章はいまはもう書けない、と思ったところで推敲をやめて、
古書現世の向井さんに原稿を送信した。
リュックを背負って部屋を出て、返却期限の切れた本を図書館に返し、
雑司が谷をまわって、開店したばかりの「ひぐらし文庫」に寄った。

テーブル席には女性がふたり座っていて、ひぐらしさんと話をしていた。
おしゃべりが小さな店内の本棚や、床板や、カーテンの向うにちらりと見えるシンクに
ころころとかろやかに転がってひびいた。人肌のここちよさが空間に満ちた。

twitterでつぶやいたことを伝えると、ひぐらしさんはすぐに気がついてくれた。
ひぐらし文庫では織田作の文庫と、かわしまよう子さんのミニコミを購入した。
ハルミンさんが『すばる』の短期連載で紹介していたのを見てから、
ぼんやりと探していたので、見つけられてうれしかった。

ひぐらしさんでいただいたハートのついたチョコクッキーをほおばって歩いていると、
花びらのような雲が空にはりついていた。
雲を見ながら歩いていると、割烹屋までの道を聞かれたので店の前まで案内した。
いまだに鬼子母神周辺の道案内に自信がないので、自分の目で見て確かめたかったのだ。

スーパーの前で、親子が「足じゃんけん」をしていた。
向井さんからメールが来て、すぐにアップする、と言ってくれた。
携帯電話を閉じて、一週間に一回だけ帳場に入らせてもらっているポポタムへ向った。
街の縁が染めたように蒼くなっていた。

そんなふうにして書いた「雑司が谷白想」の3回目がわめぞblogにアップされました。
わめぞのニューヨーカー、武藤さんについて書きました。
よかったらのぞいてみてください。
今年は1ヶ月に1回のペースを守れるよう、努力します。


乃木繭子「雑司が谷白想3」


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by mayukoism | 2010-01-14 02:00 | 言葉

WALKING IN THE RHYTHM

Fishmans佐藤伸治はかつて歌った。

歩くスピード落としていくつかの願いを信じて
冷たいこの道の上を 歌うように 歌うように歩きたい


それは『WALKING IN THE RHYTHM』という歌で、わたしは22歳だった。
この身体にいまは血がながれていてあたたかいように、
この詩はそのときの自分のすみずみまでゆきわたった。
ゆきわたる、と変換するまでもなく、聴いたそばからそれが呼吸なのだった。

お茶の水駅から明大通りを下るとき、よくこの歌が頭の中で流れる。
歩くスピードを落として、いくつかの願いを信じて、歌うように、歌うように歩く。
それが、奇跡にかぎりなくちかいリズムであることを、いまはおもいながら歩く。

自分にながれているリズムのことをときどき考える。
すごくゆっくりだ。
うごいてる?ちゃんと息してる?とおもうほど、ゆっくりだ。
はやい人にあこがれる。はやい人の背中を見ている。
はやい人の背中が見えなくなったところが、わたしの地平線。
地平線とはたどりつかないもののこと。

地平に眼をこらしながら、いったいどこまで行けるだろう。
書きだして、ふと思い出して、Fishmansの歌を久しぶりにCDできちんど聴いているけれど、
生きるために必要なやさしさがあるとして、そのやさしさにはこんなに種類があると、
そのやさしさにはこんなにもたくさんの景色があると、
佐藤伸治の詩がいまもわたしにおしえるのだ。
このリズムで行くしかないのだ。

走り出したって追いかけないというやさしさもあるのだ。





君の一番疲れた顔が見たい
誰にも会いたくない顔のそばにいたい

それはただの気分さ それはただの想いさ

Fishmans『それはただの気分さ』

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by mayukoism | 2010-01-06 02:11 | 言葉

北へ

りゅうせつこう、というひびきから、きらきらとしたイメージがふと頭をよぎったのだが、
雪をそこへ投げいれるのだと聞き、なるほど流雪溝か、と、廊下に貼りだしてある
「流雪溝利用当番表」を見ながら、道路のあちこちに壁のようにそびえる雪のことを思った。
いっぺんに雪を投げいれると溝はすぐにいっぱいになってしまうから、
家ごとに使用する時間が決まっているのだった。

カーテンごしに外を見て、やんだか、と尋ねる人がある。
カーテンをひらこうとすると、まだ降ってるよ、縦にうごいているもの、という返事がある。
しばらくながめていると、レースのカーテンをこまかく裂くように間断なくうごく白い影がある。
白さにはいろいろな白さがあり、白さにはまたさまざまなかたちの暗さがある。
その暗さのかたちをはかりたくて、雪を見る人はひとりひとり小さな窓をもつ。
その窓の前で、自分の息の白さのためにすこし黙る。

大きな川の大きな橋をわたる。
欄干にうめこまれた西脇順三郎の詩碑がある。
前を歩く人がその詩の校歌を歌っていたけれど、いまかすかなフレーズしか思い出せない。
雪野原にはさまれた信濃川の流れは、吸いこんでも吸いこんでも吸いこみきれないほど大きく、
その大きさと向き合うことでいっぱいになっていた。
夏に見た川とはちがう。夏の信濃川はおおらかだった。冬の信濃川は情熱的だ。情熱が流れをつくる。

他人の故郷で、昨年とおなじように屋根から雪の落ちる音を聞きながら、年を越えた。
自分が知るはずのなかった時間を、この町の景色やこの町の人の話から知ることができるのが、
いちいち楽しくて、細胞がすべてアンテナになる。
だから、なぜここにいるのだろうとはもう思わなかった。
2009年にできたこととできなかったことを頭の中で書きだしながら、ほんとうに大事なことを
まちがえないようにしようと思った。ほんとうに大事なことはそう多くない。



2010年は、こちらのブログと、わめぞブログの「雑司が谷白想」を無理のないペースで
定期的に更新したいと思います。
ここから見える人にとっても見えない人にとっても、自分にとっても、2010年が紆余曲折ありながら、
ふりかえればいい年になるように。
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by mayukoism | 2010-01-04 03:44 | 見たもの