乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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君が僕を知ってる

こんばんは、とあいさつしながら入れるお店があるというのはいいことだ、と思う。
ヒナタ屋ではいつも、チキンカレーとグラスワインをたのむ。
雑誌に載ってどうでしたか、とおたずねすると、ふだんは来ないような層のお客様が来て、
なんだかへんなかんじ、でした、と言う。
おもわず、このままでいいです、と言ってしまう。

大きな窓をゆったりとながれていく夜を見ている。
夜は光ったり、ふくらんだり、ふりむいたりしている。
ただそれだけを見ている。

きのう研修した女の子が今日は来なかった。
開店前に電話があり、自分にはできそうもないのでやめたいと言っていた、と伝え聞く。
おりかえし電話をして、ゆっくりと話をしてみたが、意思はかわらず了承した。
売場をまわり、よくお尋ねのある棚を説明し、レジではなにが起きてもフォローできるよう、うしろにつく。
ひとりアルバイトをうけいれるということは、すくなくとも二日間、その子にかかりきりになるということだ。
だから、その子が来なくなると、ああ、あの時間いったいなんだったんだろうなあ、ということになる。
そしてそれは、よくあることだ。

よくあることで、慣れている。
慣れているけど、見えない部分をすりむいている。
なにがまずかったのかなあ、と考えたりもする。
お湯にはいるとひりひりいたむ。

それにしてもここのところずっと、なにかがくるしいと思っていた。
それがなにかわからなくてまたくるしかった。
うんざりして、いいかげんわかりたいと思って、たちどまった。
ひとつわかったことは、自分にできないことをご丁寧にかぞえて、ならべあげるのはやめなさい、ということ。
できないことをできるようにするのは、それはすばらしいことでしょうが、できないことばっかり考えていると、
しょっちゅう思考が停止する。
できないこと、できなかったこと、これからもしないだろうこと、すべてをやろうとするのはもうやめよう。
たまにはきちんと、自分にできること、自分にしかできないなにかのことも、考えよう。

帰宅して、忌野清志郎が亡くなったと知った。
RCサクセションはもちろん遅れて知ったし、ライブに行ったこともない。
ただ、大学に入学したその日にさそわれた映画制作サークルの先輩が、たいへんなキヨシロー好きだった。
温厚な雰囲気のその先輩が、カラオケで「雨上がりの夜空に」を跳ねながら歌った。
サークルとは言ってもほとんど飲むために集まるような、ゆるいサークルだった。
その先輩は、同じサークル内にいた恋人とうまくいかなくなって、やがて来なくなってしまうのだけど、
その後もカラオケに行くと、最後は「雨上がりの夜空に」で、全員がなんとなく跳ねる、という、
おかしな慣習だけがのこった。
さっきからずっとYouTubeを流している。
とっても生きている。
いない人の歌として、聴くにはちょっとはやすぎる。

今までして来た悪い事だけで
僕が明日有名になっても
どうって事ないぜ まるで気にしない
君が僕を知ってる

RCサクセション『君が僕を知ってる』より

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by mayukoism | 2009-05-03 01:51 | 生活
休日。
ふらふらと往来座に行くと、せとさんがいつもよりもひきしまった表情で、若者ときびきび話している。
取材だって、と棚の前でのむみちさんが言う。
せとさん、おはなし上手ですね、なめらかにしゃべっている。
せとさんの声をBGMに、のむみちさんと小説家・高橋たか子の話。
尾崎一雄が一棚どん、と入っており、中から1冊購入。

『尾崎一雄対話集』(永田書房刊)

少し前の作家の対談や鼎談て、どうしてこんなにおもしろいのだろう。
往来座を出て、まよわず「キアズマ珈琲」に向かい、カウンターで読みふける。


丹羽  やはり肝心なものには触れてなくて、外側のアクセサリーだけだったという感じがする。何か一つはつかんでいたんだろうけど、重大なものじゃないんだ。
高見  今の話で感じたことは、若い人でうまい小説を書く人はずいぶんいるんだけれど、やっぱり自分自身を出してくれたほうがいいという気がするね。それが新しさということだな。
尾崎  最初出た問題に戻るようだけど、そうでなければ長続きしない。ただ目先を変えてやってるだけでは、うそっぱちになっちゃうし、本物でないから、結局ダメでしょう。ここのところ、みんなそうじゃないですか、新しく出てきては消えていくという結果になっている。

尾崎一雄・丹羽文雄・高見順鼎談『小説家』・「文学の古さ・新しさ」より


デニーズで知人とこの本の話になり、そこから話はひろがって、「いま最強の文学賞の選考委員を
えらぶならだれか」という話になり、おもいのほか夢中になって考える。
たぶん見にくいけれど、右下の写真は手書きの円卓です。選考委員がこの席順で座る。
7名であることと物故者はいれないというルールが課される。
最強、というより、やはり7人のバランスを考える。

ホスト役…高橋源一郎
批評としての文学…柄谷行人
映画…金井美恵子
おじいちゃん…古井由吉
理論…保坂和志
若手…川上未映子
詩…荒川洋治

・やはり高橋源一郎はどうしてもこういう場にはかかせないと思う。
・いま柄谷行人がもういちど文学を批評してくれたら、それだけで読みたくなるだろう。
・金井美恵子はとにかくふんぞりかえっていてほしい。ときどきは蓮実派としての発言を。
・古井由吉はおじいちゃんのようににこにこしているのだけれど、最終的にたぶんこの人がすべてを決める。
・保坂和志は小説論三部作の理論をここで実践。(でもほんとうはそろそろ小説を書いてほしい。)
・川上未映子は若手代表として。個人的に決して川上未映子は好みではないのだが、若い書き手で、
発言が信頼できそうな人が他に見当たらないし、たぶんこの人がひっぱっていくべき未来の「文壇」が
あるような気がするので、期待をこめて。
・他の分野からだれかひとり入れたい、と思ったところ、知人と一致したのが荒川さんでした。

個人の見解なのでまったく責任は負えませんが、ああ、おもしろい。
最強、なら村上春樹はどうするのか、という問題については、村上春樹を入れるとどんなメンバーを揃えても、
どうしても村上春樹に持っていかれてしまうので、いっそ大江健三郎賞のように「村上春樹賞」を
創設してしまってはどうかと思い、最後に書き加えてみました。
村上さんにはそろそろ日本国内で、そういった未来につながる試みをしていただかないと、
いま村上春樹によって支えられている、とくに若い人の中にある「文学」がそれこそ
村上春樹自身によって途絶えてしまうような気がする。村上春樹がこのままいなくなったら
日本の小説はどうなっていってしまうんだろう。考えただけでおそろしい。
でもきっとないだろうな。


ひとしきり頭をつかったあとは、DVD『駅STATION』を観る。
なんだこりゃ。めちゃくちゃおもしろかった。はやい展開。まったく眠くならない。
豆さんのブログの感想にはげしくうなずく。あんなふうに紅白を見たい。
高倉健と倍賞千恵子の会話にいちいちひきこまれる。
高倉健をかっこいいとはじめて思った。
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by mayukoism | 2009-05-01 03:55 | 本のこと