乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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<   2009年 01月 ( 6 )   > この月の画像一覧

折りかえす季節

深夜のラジオがやさしいのは、夜に眠らないひとや起きるひとに向けて、
語られているからだと思います。
昨日はガーランドやバド・パウエルのピアノを聴きながら、シャッターが下りるみたいに
いつのまにか寝ていた。

最近の驚愕の事件。
お昼の休憩中に、前にアルバイトしていた古本屋店主から電話がかかってきたので、
緊急事態の助っ人要請かしらと思い電話をとったところ、用件とは別に開口一番、
あ、ご結婚おめでとうございます、と言われたことです。
電話をかける相手を間違えたのかと思いました。どこからそういう話になったのかは
なんとなくわかるのですが、えーと、しないです。予定もないです。ごめんなさい。
めでたいことと間違えられたのだから、まったく問題はないのですが、
電話を切ってしばらくしてからも、ひとりで笑ってしまった。

ちょっとした集まりの課題で、谷崎潤一郎の『京羽二重』を読んでいるのですが、
文豪、という言葉はまったく谷崎のためにあるのではないかと思う。
祇園の芸者の舞を観る話で、これは短編というより内容は随筆に近いと思うのだけど、
荒川洋治編集長『新潮創刊100周年記念 名短編』に収録されている。
抑えた文体の作家は何人か思い浮かぶけれど、谷崎のような
なめらかでかつあでやかな文章を書ける作家は、まず現代にはいないと思う。
しかしあまりにも自分から遠すぎて、どういう切り口で語ればいいのか
さっぱりわからないままこんな時間に。もともとそんな理由で、谷崎はあまり
読んでいないのだ。どうしようかなあ。

社会のことがよくわからない。こういう事態が起こったときにこうするべき、という
見えないけれどもあるらしい世の中のルールのことがよくわからない。
そこには感情がともなわないから。
感情だけですごしているなと思う。たぶんこれからもそうだろうなと思う。
だから、人と向き合って相手がなにを考えているか、とか、どうしてほしいと
思っているか、を考えることはできるけれど、そういった感情を無視して、
ルールで物事をすすめなければいけない事態におちいったとき、
いったい何をたよりに状況判断をすればよいのか。まったくわからない。
目の前のだれかをよろこばせるためだけに、いつでも過ごせたらよいのだけど、
そうもいかなくて、そういうときはきまってぼんやりしてしまう。
仕事が増えている。

夜の帰路、欄干の上を歩こうとしてとめられている酔っぱらいの大人たちを見た。
めくれたスーツの裾を見てふいに、ああ冬はもう折り返したな、と思った。
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by mayukoism | 2009-01-27 04:18 | 生活

目を閉じて旅をする


真夜中、遠いような近いような国で新しい大統領が誕生するという、
その就任式の前に、『アメリカの黒人演説集』(岩波文庫/荒このみ編訳)の
トニ・モリスンの章をひらいて、これがすごくよかった、と知人がいうので、
演説集というから政治家ばかりが収録されているのかと思ってた、などと
言いながら紙を繰るうち、涙が出たのであっと思った。

この、感情をともなういびつな体を、いつでも言葉だけが遠くにはこぶ。
小説や詩や会話や歌や、体がさまざまなかたちの言葉のフィルターを透過して、
はたと目をあけたとき、自分がまったく別の場所に来てしまったと気がつくときがある。
目の前に羅列する記号がしめす意味を追ううちに、どんどん意識が
記号の中に入ってしまって、ふりほどけないほどがんじがらめになってしまって、
あれっと顔をあげて自分がいる現実の世界をあらためて見たとき、
その世界はいいものでもわるいものでもなく、ただ違うものに見える。
違うものに見えて、なぜかはわからないけれど涙が出てしまうときがある。
鼻をかみながら草原のような人々の群れと、画面の中央におりている
赤いネクタイをみていた。

水曜の夜はサザンオールスターズ、98年夏のライブビデオを観た。
浜名湖にて、27曲+アンコール5曲のぶっ通し野外ライブ。
サザンの歌は、切なさだったり楽しさだったりくだらなさだったり、それはおそらく
人によって異なると思うのだけど、自分のいちばんやわらかい部分と親和する。
やわらかくて戻れない時間、最近だったり昔だったり、たぶんそういうその人にとって
どこか唯一の。
だから、並んで観ていた知人の口ずさむサザンと、わたしの口ずさむサザンは
きっと違う。
違うけれども、イントロにうわーと興奮したり、歌詞のすごさに身をよじったりする
今のこの時間は、同じ場所で同じものをみている、ような気がする。
というのもひとりよがりかもしれないけれども、まあいいだろう。

日記なんてそんなものだ。
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by mayukoism | 2009-01-23 03:20 | 言葉

森雅之の伏せた目

年末年始に愉しい行事が多かったせいで、まだ日常に戻れていない。
ブログも書けない。
休日が待ち遠しいのに、いざ休日となると寝てばかりいる。
部屋のまん中で、布団が自分のかたちにかたまってじっとしている。

先週は神保町シアターで、森雅之特集をみた。
大岡昇平原作『武蔵野夫人』。監督溝口健二。
すごく良質な昼ドラ、といった印象。
田中絹代と「勉ちゃん」がいったいいつそういうことになるのか、
いまかいまかとわくわく待ってしまう下世話な観客(=わたし)。
森雅之特集ということで、何となく森中心にみてしまう。
いやらしい役なのに堕ちないのは何故なのか。
人間くさい役なのに、どこか気品があるのは何故なのか。
血筋、の一言では片付けたくない。その存在感はだれにも似ていない。

それにしても、川島雄三の映画を昨年数本みてから、
その時代の俳優の名前をいつのまにかなんとなく覚えている。
轟夕起子、の字幕に、ああ『洲崎パラダイス赤信号』の、と思った自分に少しおどろく。
しかし、洲崎パラダイスは本当によかったなあ。

映画が好き、というよりもどうも邦画、しかも古いものに限るみたいだ。
神保町シアターは一般1200円、スタンプカードがあって、5つたまると
なんと次回は無料でみられるのだそう。ちょっと通ってみようと思う。
2月には『小三治』も上映。
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by mayukoism | 2009-01-20 19:10 | 見たもの
津村記久子が芥川賞をとりました。
うむ。とってみると、やや早かったのではないか、という気がする。
年末に出た『アレグリアとは仕事はできない』(筑摩書房)、『ちくま』に連載していた
『コピー機が憎い!』を改題したもので、改題したのにまったくタイトルがよくなっていないという
稀有な例で、この人はもう編集者に題名をつけてもらったほうがいいような気がするのだけど、
それはさておき、表題作は面白いんですが、同時収録の書き下ろしがいただけなくて、
それでなんとなく、芥川賞の候補に名を連ねていても気持ちが盛り上がらないでいたのだ。
今回は鹿島田真希かと思っていた。
受賞作はまだ読んでいない。
追ってきた作家が芥川賞をとるのは絲山さん以来だ。
ひとまず受賞作を読むのが楽しみです。読んだらまた感想を書きます。

最近はまっているもの。
雪の吹き荒れる12月の仙台で、知人が買った亀田製菓の黒豆入りぬれ餅「ちぎれもち」、
ロータリーで凍えながら口にして、思わずパッケージをうばってしまったほどに美味く、
感動したのですが、東京でも会えました。セブンイレブンでしか売っていない模様。
ぬれ煎好きにはこのもっちり醤油味がたまりません。

書きたいことや書かなきゃいけないことはやまほどある気がするのですが、
ひとまずはここまでにして今日は眠ります。
おやすみなさい。
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by mayukoism | 2009-01-16 02:37 | 本のこと

ゆるゆると休日

歩いているうちになにかがほしくなって、そうだ、鞄を買おう、ということになった。

10年近く愛用したAIPのショルダーはよく見るとロゴははげているし、ポケットは
やぶれているし、なかなかのくたびれ加減で、でも使いやすくて手放せないでいた。
休憩時に制服姿で、ポケットのやぶれた鞄をぶらぶらとさせている女子というのも、
さすがにどうかとはつねづね思っていて、休日に散歩の目的地を考えていて
ゆるゆると思いついた。鞄を買いかえてみようと。

そこで思い出すのは『読むので思う』(荒川洋治著/幻戯書房)ですが、
借りものだったゆえにいま手元にはない。
『読むので思う』の中に、鞄を買いかえようとする随筆があったのだ。
結局さいごは、愛用の鞄を洗って、また使いつづけるのだけれど、その気持ちは
ほんとうによくわかる。
自分にとって使いやすい鞄は、身体のかたちににぴったりと寄りそうのだ。
そんな鞄はぜったいに二度と見つからないのだ。

町へ出てみるとおりしもバーゲンの季節。
ショッピングモールを歩くだけで、女子力にきらきらと圧倒される。
女子力、足りてないなあと思う。
では女子力が足りていたことがかつてあったのか、というと、それもない。
女子力なんてなくてもいいや、とむかしは思っていたけど、今はもう少しあってもいいよね、と
思う。
しかし、バーゲンで鞄を見ている女子はほとんどいない。
なるたけ量の入る、でも決して大きすぎないショルダーバッグをゆるゆるとさがす。

買物で失敗したくないので、何度も同じ鞄を見る。
これか、という鞄はしょってみる。
はっとするようなすてきなショルダーバッグが、男子服売り場に展示されていたのだけど、
布製だったのであきらめる。普段使う鞄は、床に置いたりふりまわしたり(?)するので、
布だとたぶんすぐ汚れるし、いたむ。
男子服売り場のほうが気になる鞄が多い。しょせんわたしは男子力なのか。
何度も何度も見る。
所持金も何度も見る(増えない)。

鞄を見ているうちに、なんだかいいお財布が半額以下で売られているのを見つけてしまい、
ううむ、と唸る。
今の財布はもらいものなのだが、小銭口がちいさいのでお会計のときとっても苦労するのだ。
その点、目の前にあるこの財布は、小銭口がぱかっと上に開いて、カードポケットも
たくさんある。ぱちんと閉じられるのもいい。
何度もぱちんとする。ぱちん。ぱかっ。ぱちん。
ううむ。

これかな、と思った鞄が安くなったので、財布も購入することにする。
あたらしい鞄にあたらしい財布を入れると、なぜだか自分が少しいいものになれたような
気がする。使い勝手をたしかめて、前のあの鞄と比べたりすることもそりゃあるけれど、
これはこれでいいのだと思う。そうやって慣れていこう。
余った少しのお金で、紅茶を飲んで帰る。
冬休みの余韻が、ゆるゆる、ゆるゆる、と夕闇に消えていった。
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by mayukoism | 2009-01-10 01:03 | 生活

2008年から2009年

2008年から2009年にかけての短い時間に、わたしは正しさについて考えていた。
正しさとはなんだろうかと。

わたしにとって、正しさはつねに自分の外にあった。
正しさは自分以外のだれかが規定するものであった。
わたしは正しさを規定するだれかや、なにかを乱さないために、いつだってその正しさを
全身でうけおった。
そこに「わたし」は必要なかった。
だれかの正しさがあればよかった。
それで「だれか」の安眠がたもたれるかもしれないのなら、「なにか」が淀みなくきよらかに
流れていくのなら、それがわたしの正しさだった。
いったいそこに何の不自由があるというのか。

2003年、27歳の冬に8年勤めた書店が倒産した。
倒産することは前々からわかっていた。小手先で日にちをひきのばしていただけで、
いよいよ、という気持ちだった。閉店後の店内で残った社員女の子4人で棒銭を
ぜんぶ割った。小銭のいっぱい入ったリュックを一人が背負って、夜明けちかい
住宅街を自転車で連なって走った。
その年の春に家を出て、別の書店でアルバイトをはじめ、夏には別の書店に移り、
同じころ、わたしの20代の「正しさ」のほぼすべてを構成していた人間とはなれた。
そのときわたしははじめて「正しさ」がいったい何なのか、まったくわからなくなった。

自分の「正しさ」について、自分の力で思考しなくては生きていけないのだと
わたしはそのときはじめて言葉ではなく身体で知ったのでした。
遅すぎるけど、もう仕方ない。
そのときはそのときで、時間が仮に戻ったってたぶんそのときでしかない。

2008年という年は、心情的には2003年とおなじくらいはげしい変化の年だった。
わたしが考えて、ぼんやりとではあるけれどもこれかもしれないと思えた正しさが、
決定的にだれかを傷つけることが、なにかを乱すことが、本当にあるのだった。
それをせおっても、わたしが選んだぼんやりとした「正しさ」の先をもっと見たいと思ったのだ。
2008年が終わろうとするとき、わたしは屋根から雪の落ちる音がときどきしずかにひびく、
北国のお家の中にいて、紅白歌合戦を見ていた。紅白歌合戦をこんなにきちんと見たのは
はじめてだったと思う。2007年の終わりには、まさか来年自分がこんなところにいるなんて
想像もできなかった。
遠くまできてしまった。
涙ぐんでいるんだがいないんだかよくわからない、氷川きよしのつるんとした顔を見ながら、
わたしは考えていた。わたしの正しさって、いったい何なんだろう。

2009年は、2008年に出会えたさまざまな人や、思想や、言葉や、そういったすべてのものに
自分の力でなにかしらの裏づけをしていかなければいけないと思う。
自分に何ができて、何ができないのかをちゃんと知らなきゃいけないんだと思う。
その中で、ひとつでいいから自分がどこに行っても、だれといても、だれがいなくなっても、
「これだ」とさしだせる何かがほしいと思う。
そのためにどうすればいいのかは、実はちょっとよくまだわからない。
とりあえず疑問をそのままにしないこと。

新年早々、個人的なことを書いてしまいました。
あけましておめでとうございます。
ここからはだれなのかわからないのですけれど、今年もよろしくお願いします。
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by mayukoism | 2009-01-09 00:37 | 言葉