乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

おばあちゃんに会いにいく

おばあちゃんは小さい。
立ち上がると半分くらいしかない。
着られる服がない。小学校三年生向けのズボンが比較的よい。
ぶかぶかのジーンズの下に、余った『nicola』の付録の靴下を履いている。

今日はじめて、おばあちゃんの本屋がかつて古本屋であったことを知った。
ずいぶん長いことやって、そのあとは貸本屋、でもそのうち関西の人が東京に進出して、
関西人は商売がうまいからかなわない、と、新刊本屋をはじめた。
その話をもっと聞きたいと思ったが、おばあちゃんの耳はとおい。
そして補聴器をつけたがらない。
餃子が食べたい、と言ったのに、大きな傘だね、と言われる。
それに、根掘り葉掘り聞くと、話し終えたときふといなくなってしまう気が少しして、聞けない。
本屋のことはいつでも聞けるからと思って、いつも聞けない。

夜中に変な声の人が来たらとびらを開けちゃだめだ、と言う。
来たら、もう寝ましたと言え、と言う。

珈琲を飲んで、帰り際、駅まで送っていくから、とやわらかく背中を曲げる。
駅で、おばあちゃんを改札の向こうに、一人で帰すことのほうがどう考えても心配で、
極悪非道な孫の図だと思うのだが、二人で商店街を歩く。
瀬戸物屋がなくなってドラッグストアに、煎餅屋がなくなって不動産屋になっていた。
よく連れていってもらった玩具屋は、ずいぶん前になくなってジーンズショップに
なっている。
店を閉めたあとの麦酒が唯一の愉しみ、と横でおばあちゃんが腰をういとのばす。

気をつけて、と言い合い別れる。
改札を通って振り向くとまだいる。
腰を曲げて、顔だけがこちらを見ている。
なんて小さいんだ、おばあちゃんあなたは。
蛍光灯のたよりない宇宙にまぎれてしまいそうですよ。

手をふる。
[PR]
by mayukoism | 2008-11-17 00:17 | 生活