乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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池袋モンパルナスをさがして

休日。
歩いている。

『池袋モンパルナス 大正デモクラシーの画家たち』(集英社文庫/宇佐美承著)は、
寝る前などにちょこりちょこりと読んでいる。
読み終わったよ、というひとと連れ立って、モンパルナスの景色を探しに出た。
アイスティーだとだまされて、朝一番に飲んだアイスティー割のウィスキーが、
アスファルトを光らせている。

いきあたりばったりのふらり旅なので、事前にコースを調べるようなことはしない。
ここらへんか、という場所で、『小熊秀雄と池袋モンパルナス』(オクターブ/
池袋モンパルナスの会責任編集/玉井五一編)などをひらいて、
現住所を確かめながら歩く。歩く。
立教通りをくだり、霜田橋にさしかかる。このあたりは暗渠になっているはず、と言うので
そばにあった谷端川緑道の案内図を見るとたしかにそうだ。

流れる水を足の裏に感じようとすることは、自分の内臓を感じようとすることに似ている。
見えないけれど(たぶん)そこで動くもの。
当時、このあたりに出ていた屋台に酔っぱらった芸術家たちがたむろしていた、との
説明を読み、ビールとチューハイをあける。
すこんとぬけた秋の青空。

霜田橋を過ぎて地蔵堂商店街へ。
このあたりに小熊秀雄が住んでいた東荘があったようで、番地をたよりに路地を
うろうろとするが特定できない。
とそこに、軒先でおいしそうに煙草を吸っている老人の姿。白い髭をのばしてまるで
仙人のような風貌。彼はすたすたと近づいて、件の老人に東荘の写真を見せた。
はて。
首をかしげる仙人。
このあたりはそう長く住んでないものでねえ…すいませんね。
お礼を言って辞す。
外見だけはすごーく古くからの住人ぽかったのになあ…と呟きつつ、さらにまわってみたが
結局東荘跡へはたどりつけなかった。

このあたりは散歩コースだったんだ、というひとについて歩く。
目的地があると迷うけど、目的地がなければ、ただ歩けばいい。
歩いて、目の前の景色をただ全身で受けとめればいい。
「カーサセドロ」という名のアパートや、坂の中腹が階段になった路地、大きな欅の木の下を
抜けて、気になりつつ訪れたことのなかった「熊谷守一美術館」へ。

油絵では「たまご」、墨絵では「唯我独尊」と「とかげ」がすばらしくよかった。
絵を見ていて、その絵に描かれている世界の「重さ」を感じる。
テーマとか、背景とかそんなんじゃない。もちろん紙の重さでもない。
その、もとは白かったろうと思われるものの上にのせられたものは
あるたしかな「世界」であり、その世界が目の前に「ある」ということを、目ではなく
身体の内側からふつふつと感受するような。
言葉じゃない。
うまく言えない。
熊谷守一は油絵の印象が強かったが、墨絵もいいんだな。
『へたも絵のうち』、もう一度読もう。

そのあと、やや疲労した貧乏な散歩者たちは、目当ての定食やがことごとく
閉まっているというトラップにかけられ、結局、夕方近くに江古田の「洋包丁」へ
ほうほうの体で入り、メンチカツ定食に予想以上に満腹にさせられて、
わっしょいわっしょいと家路を急いだのであった。

…というのは実は先週の出来事である。
夏休みが終わり、働いている店で流血さわぎがあったり、新卒者向けの座談会を
やらされたり、研修のレポートでなぜか書評を書かされたりして、予想どおりあわただしい
一週間だったため日記を更新できなかったのです。
そのあいだずっと、散歩の同行者から日記を書け書けと言われていたので今日ようやく
書きました。
おわり。
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by mayukoism | 2008-09-30 21:17 | 見たもの