乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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告白

ここのとこ浮気をしていた。浮気をして、新しいドトールに通っていた。
200円お得なコーヒーチケットは「裏面捺印の店舗」でしか使えない。
わたしは新しいドトールでチケットを買い、しばらく通ってみることにした。

新しいドトールは職場からほどなくちかい。従業員がたくさんいて、
例えばトレイを返却口まで持っていかなくても取りに来てくれる。
つねに堅くないチーズトーストを出してくれる。壁がヤニ色でない。
トイレの鍵はちゃんとしまる。空調もほどよく、店内のすみずみに
目をひからせる店長はなんだか頼れそう。

なのになぜ、今日わたしは古いドトールに行ってしまったのだろう。
チケットも買ってしまった。3階は冷凍庫のようだ。タンクトップの男の人が
時々腕をさすっている。

だいたいこのドトールは変な客が多い。日曜の午後にいる、窓際の席で
決して座らない男の人、何やら勧誘の手ほどきを、見るたびちがう女の子に
している男の人、しぱっしぱっ、とよく通る高音で、いつまでも歯を
鳴らしつづけるおじいさん。動物園かここは。

トイレの鍵はしっかりと水平にしないと開いてしまう。わたしはこれで2回ほど、
中の人をびっくりさせてしまったことがあるがわたしのせいじゃない。

店長はバイトと思われる女の子といつも最高につまらない軽口をたたいている。
このひとだましやすいだろうなあと思う。調理がだれより遅い、がチーズトーストは
なかなかいい加減で焼いてくれる。

茶色い髪をうしろで束ねた、笑顔のやわらかい女の子が、わたしを見ると
いつも、こんにちはー、と言ってくれる。何も聞かず、紅茶にミルクと砂糖を付けてくれる。

なぜか、飽きない。
そして、落ち着く。

返却口の手持ちぶさたな従業員を見ながらチーズトーストを食すことが、
あんなに落ち着かないものだとは思ってもみなかった。
ドトールにサービスはいらない。放っておいてくれればそれでいい。

とりあえず次、あのヤニ色のドトールに行くときはカーディガンを持っていこうと思う。

『積んでは崩し 南陀楼綾繁のブックレビュー&コラム1999~2004』
(けものみち文庫/南陀楼綾繁著)
を読んだ。
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by mayukoism | 2008-08-19 01:54 | 生活