乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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長靴同盟不参加

所用あり、以前にアルバイトしていた古本屋へ、雨中。
駅からのびるまっすぐな大通りの奥、商店がまばらになった辺りに
その店はある。
メールで連絡していたので、軒先で傘を振っていると帳場から、
店主のIさんがもう手をあげている。お久しぶりです、と声をかけると
隣りに小柄な女性。反射的にあ、お久しぶりです、と言ったあと
知らない人だと気づく。店頭で展示をしているKさんであった。気を
とりなおしてはじめまして、とご挨拶。

閉店間際の店内を早足気味にぐるりとし、3冊購入。
『青梅』(伊藤比呂美/集英社文庫)
『同級生交歓』(文春新書)
『お話を運んだ馬』(アイザック・シンガー/岩波少年文庫)
上から500円、300円、105円、でした。

依然、雨足つよし。
久しぶりだから焼鳥でも食べに行こう!とにこにこ言うIさんの勢いに
ひきずられて、ご一緒することに。
とつぜんIさんに、そういえばあなた長靴ですか、と尋ねられる。
え、長靴じゃないです、と言うと、IさんKさん、ふたりして足をのばし
すてきな長靴を披露。今日は長靴でないと参加できないんですが、
ま、久しぶりだから特別に許可しましょう、とIさんににやにやしながら言われ、
はあ、と恐縮したふりをしてついていく。

そういえばこの古本屋は、ゆるい坂の低い部分にあって、一度台風の日に
店の前の大通りが川のようになったことがあった。

帳場でのんびり文庫をみがいていたら、どうも窓越しに見える外の様子が
黒すぎる。扉を開けるともうそこまで水がきていた。
慌てて外の、ビニールをかぶせていた均一台を中に入れて
遠く駅の方角をながめやると、路上駐車の車の、タイヤ半分くらいまで
灰色の水が波打っており、完全に川。
帰れない、ことと、店に水が入ったら本がだめになる、ことを隅々まで
想像してかるくパニックになりながらとりあえずシャッターを閉めてみる。
閉ざされた店内でアン・サリー嬢は軽やかに歌う。

しばらく帳場で文庫をみがいていた。勝手口から時々外を見て、
様子がまったく変わらないどころか、どんどん水が近くなるのを見て、
とりあえず移動できる本棚を店の奥に押しやり、入口に泥落としの
赤いマットをはさんで、アン嬢に別れを告げ、ごみ袋を何枚か持って店を出た。

裸足で歩こうかと思ったが、何か踏むといけないのでざぶざぶ歩いた。
パンツを膝上まで上げて、足にごみ袋を巻いたりしてみたけどすぐに落ちてくるし
流れていく。もう知らん、とざぶざぶびしゃびしゃ歩いてるうちに、ふくらはぎに
感じる水の抵抗が心地よくなった。後ろ向きに歩いたり、殿様みたいに水を
蹴飛ばしながら歩いた。

いつもと違うって本当にたのしいなあと思った。

駅に近づくにつれて、通りの水はひいたが、わたしはざぶざぶだった。
駅のホームで電車を待つ人々は、濡れてはいるがきちんと人の姿で
立っているのに対し、わたしはいま山をおりてきたけものみたいな姿で、
羽織ったごみ袋をはずしたりパンツの裾をしぼったりしていた。
本がだめになることだけが心配だったのだけど、大丈夫だった。
店内には水は入らなかった。
長靴を買おうかなあとあのときも思ったのだ。あれから何年?まだ長靴は買っていない。
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by mayukoism | 2008-07-01 19:00 | 見たもの