乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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あかるい惑星 ~木村衣有子・武藤良子 二人展「十二篇」~

ブックギャラリーポポタムにて、文・木村衣有子、画・武藤良子による
「十二篇」が開催されている。
明日、すでに日付が変わっているので、正確にいうと今日が最終日だ。
本音を言えば、もういちど見たかった。記憶をたぐって書く。

白い壁には色とりどりのマスキングテープがまっすぐに貼られ、
テープを罫線に見立てて、武藤さんが文章を書いている。
もはやあれは武藤さんの指先なのではないか、と思われるクレパスで、
壁一面に書かれた武藤さんの文字を、ゆっくり咀嚼するようにたどる。

そこに書かれているのは武藤さんの字だけれど、武藤さんの文章ではない。
『十二篇』と称された文章は木村衣有子さんが書いている。
他人の文章で、白い壁を埋めつくす武藤さんを想像する。

そういうとき、文字は「意味」ではなく、それこそ起源としての「形」になる。
一巡目は「意味」を読み、二巡目で「形」を読もうとした。
すると不思議と、白い壁が気になった。壁には釘穴もテープ痕もない。
武藤さんの文字と絵と、木村さんの文章にはさまれた空白があるだけだ。

他人の文章を、自分の文字で壁に書くこと。
だれかの文章を、えんえんと白い壁に書く。
終わらない物語を、休むまもなく壁に書きとっていく。
修行みたいだ。

そう思うと、木村さんの文章の「書かれていない部分」も気になってくる。
『十二篇』は「山雀さん」なる女性を中心に書かれた文章であるけれど、
「山雀さん」が出てこない話もあって、ではその文の主体はだれなのか、
そもそも「山雀さん」とはだれなのか、読むたびにわからなくなる。

そんなときポポタム店長の大林さんが、今回の展示について、
「聖書のように誰が書いたかわからない長い読みものから、
木村さんの言葉で十二篇を取り出したようなイメージだった」と仰っていて、
なるほどなあ、と思った。

壁に書かれているのは『十二篇』の一部である。
全文が掲載された別売りのペーパーはあるけれど、ペーパーを読んでも
『十二篇』の謎はほどけないし、つながらない。
でも、これははじめからほどくものでも、つなげるものでもなかったのだ。
では『十二篇』とはいったいぜんたいなんなのだろう?

武藤さんの絵も文字も、木村さんの文章も、なにかがほんの少しずつ、
足りない気がするのだ。足りないというのは不十分という意味ではない。
足りない分を、木村さんは武藤さんに、武藤さんは木村さんにあずけようとしている。
ふたりの熱はわずかにずれて、わからない部分はわからないままになっている。

武藤さんの文字による武藤さんの、木村さんの文字による木村さんの展示なら、
たぶんこんなことは感じなかっただろう。
文字の書かれていない白い壁と、物語に書かれていない「山雀さん」を想像するとき、
ぽん、とはじけるように、わたしのなかに、この星に似た別の惑星が生まれる。

その惑星では、「山雀さん」がジーンズを脱ぎすてているかもしれないし、
転がった豆は、サッシの桟にはさまって見つからないかもしれない。
でもそこにはたしかに「山雀さん」がいて、もしかしたら「武藤さん」も「木村さん」もいて、
いっしょに豆をさがしている。三人で床にはいつくばって、真剣な表情で。

はっとした。
なんて明るい想像だろう。







まだご覧になっていないという近郊の方、今日をすぎれば消えてしまう展示なのでぜひ。

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ポポタムHPより転載★

●木村衣有子・武藤良子 二人展「十二篇」

木村衣有子(きむらゆうこ)の文と
武藤良子(むとうりょうこ)の画の展示。
4.4(水)〜14(土)
12〜19時 最終日は17時まで
4.9(月)のみ休み 入場無料
※4.6(金)19時半〜 オープニングイベント
木村衣有子×武藤良子トーク
参加費1000円(ペーパー『十二篇』と1ドリンク付)
定員30名(要予約/03-5952-0114 popotameアットkiwi.ne.jp)
企画:ポポタム
展示デザイン:to-kichi , Harenichi
この展示は5.1(水)〜6.3(日)
盛岡・Cygに巡回予定です。cyg-morioka.com/
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by mayukoism | 2012-04-14 05:17 | 見たもの