乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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吉本隆明がいなくなった日

吉本隆明がいなくなった日


交差点ではいさかいがあり
白い靴下の見える担架が
救急車にのせられていった
横断歩道で警官と対峙した
黒っぽいネクタイの男に
見おぼえがある気がしたが
ふりむかずにあるいた



吉本隆明がいなくなった日


白杖の男性が車道に向かい
あぶない と思ったところで
杖のないほうの手をあげた
空車の赤い文字は3つ過ぎた
ふりむくと男性は停まった車と
すこし長めの会話を交わし
後部座席にすいこまれていった



吉本隆明がいなくなった日


中華屋の看板に黄色の電飾が走り
カウンターでラーメンをすする
女性がむかしの同僚に似ていた
むかしの同僚は北のほうで昇進して
課長代理になったから
別人だということはわかっていた
中華屋の閉店時刻は午前2時だった





思想家がひとりいなくなるということは
大きな夜のようだと思った





大きな夜からのがれるため夜は
明るくなるのかもしれなかった





本屋ではたらいています でも
『共同幻想論』は読んだことがない
『言語にとって美とはなにか』は読んだが
なにが書かれていたかおもいだせない
それでも追悼の文字をかかげて
明日またあなたの本に触れる
棚をつくる、ということは なんて
孤独な作業なのだろうと思いながら
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by mayukoism | 2012-03-17 03:59 | 言葉