乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

歌う人

きのうは前髪をすこし切って、ふちがみとふなとライブに知人とでかけた。

シアターイワトに行くのははじめて。
入口の行列のあいまに岡崎武志さん、ナンダロウさんの姿をお見かけし、ごあいさつ。
ビルのむこうの夜になろうとしている空に、そっくりな色のチケットをいただく。
暗い小さな入口で、ムギマル2の「マンヂウ」2個入り紙袋をいただき、ほこほこと席につく。

ゴゴシマヤの澄子さんが入ってきて、ごあいさつをする。
前のほうに岡崎さんたちがいらっしゃいます、とお伝えして小さな背中を見おくる。
ほんの少しゴゴシマヤで店番をまかされていた時期があり、そのときにはじめて、
ふちがみとふなとを聴いた。
帳場にはいると、CDプレイヤーにはたいていふちがみとふなとのCDが入っていた。
そのままかけて、毎回そのままかけるうちに、耳にくっついてはなれなくなった。

ちょっときゅうくつで、訪れる人びとの体温がかたまりになって渦を巻いているような、
小劇場のこの雰囲気はひさしぶりだなあと思う。
「マンヂウ」の組み合わせにはバリエーションがあり、知人は「黒蜜地につぶあん」と
「ヨモギ地にチーズ」、わたしは「ヨモギ地につぶあん」と「ヨモギ地にうぐいすあん」だった。
ほのかに暗いまま、ゆっくりとライブははじまる。
ペールエールを瓶で飲む。

7時半から休憩をはさんで22時まで、ながいながい冒険をしたような気分だった。
休憩をはさんで後半のはじめ、ふちがみさんがよいしょと靴をぬぎ、マイクを持ちながら
椅子をわたって観客席のまんなかまで来て、歌いながらステージのふなとさんの
声がとどくかをたしかめていた。音量もう少し上げて、と顔をきらきらさせながら言って、
また椅子をわたってステージに戻っていった。

そこにいるのはふちがみさんというたしかな身体なのだけれど、
そのあまりのかろやかさをまるごと空気のようだと思った。
空気は空間のすみずみまで満ちて、人びとの胸のうちにもいつしか満ちている。
ふなとさんのウッドベースは表にも裏にもなって、この小さな空間をくっきりとふちどる。
肩を抱くようにつまびくウッドベースを色っぽいと思う。
遠くてはっきりとは見えないふなとさんの指先や、弓がふるわす弦のうごきに目をこらす。

ふちがみとふなとの歌は、どうしてこんなに朝にも昼にも夜にも、春にも六月にも
裕ちゃんにもうしろまえにも、くるくるとゆるゆるとどこまでも自在になれるんだろう。

最後にリクエストに答えて『歌う人』をうたう。
ああ、ゴゴシマヤでこの歌をずっと聴いていたな、と思いだす。
わき水の最初の一滴のように、歌がその場ににじみだす。
ダニエル・ジョンストン『The story of an artist』のカバーであることをはじめて知った。
そのどうしようもなく、どうしようもなくうつくしい歌で、
コンパスが円をとじるようにライブは終わった。
[PR]
by mayukoism | 2010-05-26 20:00 | 聞いたこと