乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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雑司が谷からとおく離れて

むかし倒産した書店で、いっしょに働いていた女の子たちと会う。
倒産して、べつべつの勤務先で働くようになってからも、定期的に会っている。
わたしはその町を出てずいぶん経つけれど、彼女たちはまだ本屋のあった町に住んで、
その町で子どもを生んだり、二世帯住宅に迷ったりしている。

久しぶりに会って、なんかおもしろいことあった?と聞かれる。
おもしろいこと、たくさんある。
頭の中を圧力なべのおもりみたいなものが、しゅーしゅーくるくる回りだして、
おもしろいことを次々にピックアップするけれど、
そのどれもを話さないまま、笑う。
現在の書店業界がどれほどあいかわらずか、や、最近読んだ本がいかによかったか、や、
それもたしかに「おもしろいこと」なんだけど、たぶんいちばんに話したいことではない。
それでもそれはかなしいことではない。

いま、自分の身の回りにあることを、ひとつひとつ順をおって説明すれば、
まちがいなく彼女たちはわかってくれるだろう。
そうやってかつてはいっしょに働いて、いっしょに店がしまるのを見届けたのだ。
でもそれを話さないのは、彼女たちの知っている自分と、いまここに暮らしている自分が、
ほんのちょっとちがうからだ。
ほんのちょっとちがう自分を、ちがうままで走り回らせたい。
すべての円がまじわらなくてもいい。
彼女たちが知っているわたしは、彼女たちにあまえることを遠まわしにゆるされている。
ここではただ、その空気にあまえていたいと思うのだ。

だから彼女たちはこのブログのことも「わめぞ」のこともたぶん知らない。
畠中さんがヘーゲルに謝りたがっていたことも、
ここのところポッドキャストで、TBSラジオの「ストリーム」を聴いていることも知らない。
まじわらない円の内側で、さんざんあまえて頭をからっぽにして、また来月に、と別れて、
夜中、ひとりでもういちど「いちばん話したいこと」を考えてみた。
そうして、ぽつりと残ったのが、このことでした。

わめぞblogで連載させてもらっている「雑司が谷白想」4回目更新されました。
今回はこれまでとたぶんちょっとトーンがちがいます。
もしよかったら、読んでみてください。

わめぞblog「雑司が谷白想4」


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by mayukoism | 2010-02-19 02:58 | 言葉