乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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わたしの傘

階段をあがってすぐのところにわたしの部屋があって、
雨のあとは昨日の傘が、
扉のノブにかけたままになっているのだけれど、
いちにちはたらいて帰ってきて、玄関の傘を見つけるといつも
不思議な感覚におそわれる。

雨の昨日は手の中であんなにもしたしかった傘が、
使わなかった今日ながめると奇妙によそよそしく、
傘だけが、昨日のつづきの中にまだ存在していて、
かたくなに今日を拒んでいて、

はたらいて帰ってきたわたしと、
ドアノブにいちにち置き去りにされていた傘に流れる
時間のちがいが、
階段をあがって見えてしまった傘をまるで
侵入者のように見せる。

いつのまにか遠くなる昨日と、その遠ざかる速度について、
ふだんのわたしがどれだけ不感であるかを、
ほんのりしめった傘に触れて思う。
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by mayukoism | 2009-10-04 04:45 | 生活