乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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浴室随想

ひとり暮らしとは、自分のシャンプーのにおいを忘れるということ。
たまに他人がシャンプーをつかうと、浴室のとびらを開けたとたん、においの風が部屋にあふれて、
あ、こういうにおいだったんだ、とおもいだす。
おもいだしてすぐに忘れる。
シャワーの温度を2度上げてみる。


お盆なので、仕事帰りに今日は、おばあちゃんの本屋に立ち寄った。
地下鉄で目黒線に乗り入れる。目黒を過ぎたあたりで、落ち着かなくなる。
目黒線になってずいぶん経つけれど、目蒲線の記憶が消えない。
「目」黒駅から「蒲」田駅までの列車だから、目蒲線というのだとおそわったこと。
終点であり始発である目黒駅の行き止まったホーム。
ビリジアン色の列車のいちばん前で、足元にすいこまれる線路をずっと見ていたこと。
流れていく景色が、子どもの目の高さで、頭の中にあまりにつよくのこっているので、
つるりとした画一的な駅がつづくいまの目黒線の、密封された感じにぜんぜんなじめない。

目蒲線がうごいてる。
何回もうごかした。

おじいちゃんの仏壇に手をあわせる、のを忘れてあやうく帰るところであった。
帳場が居間、というつくりの本屋なので、お盆のお供えやらもとくにしていない。
行きがてらに買った小さなサブレは、生きてるひとのほうが大事、と
おばあちゃんの明日の朝食になった。
付録についていたらしい豹柄の定期入れを、つかう?とにこにこ手渡されて、
どうすればいいのかちょっと迷った。
来てくれてうれしかった、と左手をふったおばあちゃんのしわの薬指に銀色の指輪が見える。
おばあちゃんちのシャンプーはメリットだった。メリットは髪がきしきしいう。
いまはどうだろう。


シャンプーをすすぐ。
うつむくと、泡だった湯が足の指のかたちに流れていく。
親指のふもとにひょろりと細い毛が一本生えている。
この毛の成長するちからを、身体のほかの部分に使うことはできなかったのだろうか。
そよそよと毛はながれた。
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by mayukoism | 2009-08-16 01:06 | 生活