乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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拝啓、神保町から

7月の終わりの日曜の直情的な日差しは、この世のものをふたつにわける。
体温のあるものと、ないもの。
コミガレに流れるダブと、真昼間のビール瓶。

ドトールの窓際の席から、コンサイスの看板を見上げる。
ふと目の前を横ぎる影があったので追うと、大きな綿毛が風にあおられてのぼっていった。
コンサイスにかさなるあたりまで上昇して、空を背景にしたとき、それは小さな雲のようになった。

遅番の日は少しはやめに家を出て、田村書店をのぞいてから出勤する。
まるくなり、かさなりあう背中の間を見つけて、さっと手をのばす。
店先で小銭を出すと、よくお会計をしてくれるひとが、この本おもしろいです、と言った。

明大へとつづく並木の根が、舗装された石畳をゆるやかに押し上げている。
この、目に見える起伏に至るまでの、しずかな途方もない時間を、たぶんヒトは知覚できないのだろう。
木の気分になって、ざまあみろ、ざまあみろ、と頭の中でうたう。

ドトールの窓際の席で、『林芙美子随筆集』(岩波文庫/武藤康史編)を読む。
ピーナツバターを塗ってトマトをはさんだパン、というのはほんとうにおいしいのかしら、と読みながら、
さいきん新しくなった「スパイシードッグ」を食べていたらぼろぼろと辛いトマトが制服に落ちた。

お店でお見かけしました、というメールをなつかしいひとからいただく。
いそがしそうだったので、声はかけなかったけど。
いつか会いましょう、と親指で押しながら、これは果たされないでする約束だとわかっている。

いつのまにか、いろんなことが少しずつずれていて、そういうときほど仕事ははかどる。
朝礼で、声をふるわせて、混雑するでしょうが気持ちのいい接客を、などと言いながら、
炎天下になるだろう「みちくさ市」のイメージがすっと頭をよぎって、遠ざかりながら目をとじた。
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by mayukoism | 2009-07-27 10:11 | 生活