乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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歌いつづけるということ

ヤマダ電機のテレビ売場で、サザンの30周年記念ライブが流れているのだと言う。
これがすばらしいのだと言う。
それはそうだろう、すばらしくないわけがないだろう、ということで連れられて観にゆく。
ヤマダ電機に。

とりあえず怪しくないよう、ときどき違う売場をうろうろとし、と言うけれども、
たぶん充分あやしい。しかし、あやしいあやしくないを考えるまもなく、
AQUOSの巨大な画面に映る桑田佳祐に、たしかにすぐに惹きつけられる。
画面に映し出される観客の多くがレインコートをかぶっている。雨が降っているのだ。

上階のDVD売場でライブのセットリストを確認すると、ここから後半、怒涛の
バラードメドレーであることがわかり、慌ててテレビ売場に戻る。
そこからほぼ二時間、本当に見入ってしまった。足が少しずつむくんでいるのは
感じたけれど、まったく気にならなかった。

ひとはこんなにも代表曲を作れるものなのか。
これだけ完璧な歌があれば、どこかで満足してしまいそうなのに、なぜこのひとは
歌を作りつづけるのだろう。そしてなぜそれを歌いつづけるのだろう。
そして詩の、この世界の切りとり方はまったくなんということだろう。

また、歌う桑田佳祐と演奏するメンバーもさることながら、頻繁にはさまれる
観客の表情がなんとも言えない。今ここに立って、見ていること聴いていること、
すべての五感を信じている顔で、それぞれ笑ったりちょっと涙ぐんだり、踊ったりしている。
子ども連れも多い。

雨が降っている。
嘘みたいな話だけれど、途中で画面に入り込みすぎて自分も雨に濡れていて寒い、ような
錯覚に陥ってしまった。ちがった、ここはヤマダ電機だった。さぞかし迷惑だろうなと
頭では思いながら、離れられない。

とうとう最後まで見てしまい、放心しながらマクドナルドへ入った。

ここ何年か、それなりに恵まれた環境で仕事をしていたので、なんとなく仕事に割く
時間とエネルギーが多かったように思う。それはそれで、大事なところは持ちつづけたいと
思うけれど、どこかでこれは本当じゃない、と思う自分もいて、10代20代でもあるまいし、
なにをいまさらそんな、というのもわかるけれど、でもやっぱり違うんだよなあ、と思ったりする。

働きたくないわけではない。
ただ働くこととは別に、こうしたいと思っていることは実はずっと明確にあって、
でもそこからもなんとなく逃げている。その可能性を否定されるのがたぶんこわいのだ。
でもそれで保守的になるくらいなら、やって砕けるしかないだろうとも思う。
それに砕けてもたぶんやりつづけてしまうと思う。

そんなことをつらつらと考えながら、カラオケで二時間、サザンばかりを歌っていた。
飲みほしそびれたトマトジュースが薄まって、今日は見なかった夕ぐれの色になった。
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by mayukoism | 2009-02-05 02:43 | 見たもの