乃木繭子 本のある風景など。http://twitter.com/komayuko


by mayukoism
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目を閉じて旅をする


真夜中、遠いような近いような国で新しい大統領が誕生するという、
その就任式の前に、『アメリカの黒人演説集』(岩波文庫/荒このみ編訳)の
トニ・モリスンの章をひらいて、これがすごくよかった、と知人がいうので、
演説集というから政治家ばかりが収録されているのかと思ってた、などと
言いながら紙を繰るうち、涙が出たのであっと思った。

この、感情をともなういびつな体を、いつでも言葉だけが遠くにはこぶ。
小説や詩や会話や歌や、体がさまざまなかたちの言葉のフィルターを透過して、
はたと目をあけたとき、自分がまったく別の場所に来てしまったと気がつくときがある。
目の前に羅列する記号がしめす意味を追ううちに、どんどん意識が
記号の中に入ってしまって、ふりほどけないほどがんじがらめになってしまって、
あれっと顔をあげて自分がいる現実の世界をあらためて見たとき、
その世界はいいものでもわるいものでもなく、ただ違うものに見える。
違うものに見えて、なぜかはわからないけれど涙が出てしまうときがある。
鼻をかみながら草原のような人々の群れと、画面の中央におりている
赤いネクタイをみていた。

水曜の夜はサザンオールスターズ、98年夏のライブビデオを観た。
浜名湖にて、27曲+アンコール5曲のぶっ通し野外ライブ。
サザンの歌は、切なさだったり楽しさだったりくだらなさだったり、それはおそらく
人によって異なると思うのだけど、自分のいちばんやわらかい部分と親和する。
やわらかくて戻れない時間、最近だったり昔だったり、たぶんそういうその人にとって
どこか唯一の。
だから、並んで観ていた知人の口ずさむサザンと、わたしの口ずさむサザンは
きっと違う。
違うけれども、イントロにうわーと興奮したり、歌詞のすごさに身をよじったりする
今のこの時間は、同じ場所で同じものをみている、ような気がする。
というのもひとりよがりかもしれないけれども、まあいいだろう。

日記なんてそんなものだ。
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by mayukoism | 2009-01-23 03:20 | 言葉